笑って 笑って 笑って

君に真っ直ぐ伝えたくて

『ソーホー・シンダーズ』備忘録 1幕

(サーシャのタップ)



ーーーーーー


サーシャ「ソーホーのオールド・コンプトン・ストリートは、ごちゃ混ぜのごった煮。何でも受け入れる、まさに怪しげなストリートだ。とある春の日の午後19時。劇場に向かう人と売春婦がすれ違い、呑みに行く若者と仕事帰りのビジネスマンがぶつかり合う。

そんな時間、『ヴェルクロ』はシングルマザー。職場のコインランドリーへ向かっている」



M1『Old Compton Street』


♪覚悟決めて、さぁおいで
 目眩く世界の幕が上がる

 猥雑でめちゃくちゃ
 でも綺麗で何故か愛しい
 パッションが胸を満たす場所
 Old Compton Street

 パンクロッカーもエリートも
 入り乱れて 飲んで食べて騒ぐの

 出合いも自由自在
 男と男でも リッチな紳士と遊んでも
 何でもあり Old Compton Street



サーシャ「高級レストランから出てきたのは、ヴェルクロの親友『ロビー』」



ロビー「ご馳走さま!」

ベリンガム卿「本当に飲みに行かないのかい?」

ロビー「仕事があるから」

ベリンガム卿「洗濯物は待ってくれるよ?」

ロビー「でも家賃は待ってくれないし…」

ベリンガム卿「それなら…」

ロビー「ダメだよ!ディナーをご馳走になったばかりなのに…」

ベリンガム卿「出してあげたいんだよ!(ロビーのポケットへ札束をねじ込む)」

ロビー「…ありがとう」

ベリンガム卿「次はいつ会える?」

ロビー「電話して?」

(ロビーとベリンガム卿、ハグ)

ベリンガム卿「ハッハッハ!…ロビー、んんーまっ!♡」


♪夢と愛と 金とエゴが
 剥き出しで溶け合う
 欲望のるつぼだ

 極上の味わいだ
 腐ってるか 食べなきゃ分かりゃしない



サーシャ「コインランドリーの2階に住んでるのは、双子の姉妹『ダナ』と『クローダ』。顔は似てないんだけど、性格はそっくりだ」



ダナクロ「ヘーーイ!!(ロビーの荷物を投げ付ける)」

ロビー「あっ!おいおい、何してんだよ!全部俺のだぞ!」

ダナ「部屋の鍵は付け換えたから」

クローダ「あんたは立ち退きな!」

ロビー「あ、おい!…母さんはどこだ?」

ダナ「はい、母さんがいくよ?」

ロビー「おい、やめろ!!…俺たち異母兄弟なのに、こんな仕打ちあるかよ…!」

クローダ「あるんだよ!この部屋も消毒しなくちゃね、ゲイが伝染らないように!」

ダナ「パパが刑務所から帰ってきたらコインランドリーも取り返すから」

クローダ「それまで家賃をきっちり払いな」

ダナ「値上げもするよ!」

ロビー「コインランドリーは母さんのものだったんだぞ!」

クローダ「でも今は違う。何故なら愚かなママが遺言を遺さなかったから」

ダナ「いくよ!」

ロビー「あ、おい!」

(ダナ、ロビーの母親の遺灰が入った缶を投げる)


♪好きなものを食べなよ(?)
 ゲイとバイかノンケ
 もちろん これから目覚めるやつも
 皆いるよ Old Compton Street



サーシャ「プリンス・エドワード・シアター周辺が何やら騒がしい。ロンドン市長選候補者の『ジェイムズ・プリンス』と、そのフィアンセ『マリリン・プラット』が到着したからだ」



ダナクロ「わぁーお」


ウィリアム「よし、時間ぴったりだ」

サーシャ「…Big Issue、…Big Issue(小声)」

ウィリアム「もっと目立つ場所で!!」

サーシャ「いって!!…Big Issue!!Big Issue!!」

ジェイムズ「参ったな、小銭がない。5ポンド紙幣ならある」


『パシャッ!』


ウィリアム「これで良し!」


♪有名人が大好き 写真撮らせて
 何で有名なのかは興味ないけど
 レッドカーペット見たら血が騒いで
 野次馬になるのさ 皆そうでしょ?

 掃き溜めか天国か
 誰でも受け入れる そんな場所さ

 大都会に一つはある
 恥知らずなカオス 無法地帯
 怪しく優しい場所

 飛び込めよ Old Compton Street
 押し寄せるリズムの洪水
 溶けて弾けて
 眩しさも 愚かさも
 全てある old compton street



ーーーーーー



サーシャ「ヴェルクロが、コインランドリー『シット&スピン』で働いている。お喋りの相手は、人力車、ならぬ自転車力車屋の店主。皆親しみを込めて、『サイドサドル』と呼んでいる」



ヴェルクロ「あーー!この服すっごく可愛い!!ベッキーが着てたの、つい昨日の事みたい!」

サイドサドル「可愛いけど高いんだよねー!子どもってすぐ大きくなるし。あ、そう言えば洗濯代いくら貯まってる?」

ヴェルクロ「8ポンド50!」

サイドサドル「全部払うとすっからかんになっちまう…残りはまた今度で良い?」

ロビー「いらないよ。あんたは半額だ」

サイドサドル「ロビーーーロビロビロビー!!!恩に着るよ!」

ロビー「うん!」

サイドサドル「そういえば、フリス・ストリートはもう通れるかな?来る時に封鎖されてて」

ヴェルクロ「あー!ジェイムズ・プリンスね!市長の!」

ロビー「まだ市長じゃないだろ。…あ。実は俺!彼が水泳選手だった頃、ベッドの横にポスターを貼ってたんだぜ!」

サイドサドル「目が覚めるとすぐ隣にいるって事ね。最高!じゃあまたね」

ロビクロ「またねー」


ヴェルクロ「…ねぇ、それ何事?」

ロビー「奴らに追い出された」

ヴェルクロ「はぁ?」

ロビー「ねぇ、クロ…しばらくクロの家に泊めて貰えないかな?」

ヴェルクロ「勿論良いよ!ベッキーあんたの事大好きだし」

ロビー「ありがとう!…奴ら、ここの家賃も値上げしやがった」

ヴェルクロ「はぁ!?ここはあんたのママの店だったのに!あたしらが切り盛りしてなかったらとっくに潰れてたよ!ママもあんたに遺したつもりだったのに…」

ロビー「でも弁護士は遺言書は無いと言った。義理の親父が刑務所から出てきたら、ここも奪い取るつもりらしい」

ヴェルクロ「まぁ素晴らしい。それで、私らはどうするの?」

ロビー「クロはステンツに戻れば良いだろ?」

ヴェルクロ「冗談でしょ!?」

ロビー「何もソーホーにいなくたって」

ヴェルクロ「そりゃあここは世界一汚い場所だよ?持ち込まれるシーツは体液だらけ。絞れば体外受精のクリニックが開業出来そう」

ロビー「母さんはそれを全部知りながら、ここに店を開いたんだ」

ヴェルクロ「あんたのママが恋しい。最初は全然覚えてもらえなくて参ったけど、最後は違った」

ロビー「母さんは天使だった!」

ヴェルクロ「はーー、救いの神が現れないかなぁーー」


ロビー「…あ。(ポケットから札束が出てくる)」

ヴェルクロ「ちょ、何それー!!あんたまだ例の男と付き合ってるの?」

ロビー「そうでもあるし、そうでも無い」

ヴェルクロ「どっちよ」

ロビー「複雑なんだよ!」

ヴェルクロ「でもお金持ちには変わり無いんだね…その人に兄弟いない!?ゲイ以外の」

ロビー「クロっ!ヤケになるなよ!いつか運命の人が現れるから。俺がストレートだったら、すぐにでもクロと付き合うのになー」

ヴェルクロ「無理な事言わないでー。でもそんなに難しい事?私はただ落ち着きたいだけ!」

ロビー「俺も。ただ毎朝同じ男の隣で目覚めたいだけなんだ。この先30年間ずっとね!」



M2『Wishing For The Normal』


ロビー「君はそれで良いって言ってくれる人」

ヴェルクロ「私にとって特別で、ベッキーにとって良いパパなら、それだけで良いの!」


♪同じ目覚ましで起きて 向い合わせで
 シリアル食べながらお喋りするの
 寝癖のままスッピンでも
 平気なんだ 彼の前なら

 一つ屋根の下で共に暮らして
 たまには手を繋ぎ踊りにも行く
 部屋には多分猫もいる
 それが俺の夢の全て

 普通になりたいだけ
 難しくないはず
 小さな愛に包まれた
 ありふれた暮らしが欲しいだけ

 普通になりたいだけ
 何故手が届かない
 欲張りなの? 高望み?
 何がダメなの?


♪~(ロビーの携帯の着信音)


ヴェルクロ「彼?ねー兄弟がいるか聞いて!ロビー、兄弟…」

ロビー「シーッ!…あ、いや君に言ったんじゃなくて。今仕事中だから。…うん……もちろん!…嬉しいよ!いつもの時間だね?ライオンの横で♡」

ヴェルクロ「ライオンの横!?その人動物園の飼育係か何か?」

ロビー「いいから」

ヴェルクロ「飼育係が大金を稼ぐなんて知らなかったー!」

ロビー「その時が来たら紹介するから!」

ヴェルクロ「その時って?餌やりタイム!」

ロビー「クロ!今はほっといてくれ!」

ヴェルクロ「…本当にその人の事が好きなんだね(ロビーの髪の毛をわしゃわしゃ)」

ロビー「うん…本当に好きだ!でもいろいろ複雑なんだよ」

ヴェルクロ「じゃあ手短にお願ーい」

ロビー「つまり、会うのが難しい相手なんだ。めちゃくちゃ忙しくて、いつもメールかスカイプ。だから、直接会える時は、俺はもっと…」


♪レシピ見ながら二人 料理をしたり
 安いソファーで赤ちゃん寝かし付けたり
 無理しないで愛し合い
 自分を好きでいられる日々を

 庭の手入れして
 家事を手分けして
 朝食はベッドで
 コーヒーカップはセットで
 学校の送り迎え
 ワインを買う
 金魚を飼う

 どうか どうか
 小さな愛に包まれた
 ありふれた暮らしが
 ただただ欲しい

 普通になりたいだけ
 何故手が届かない

 手を繋いで映画見て
 たまに割り勘で食事して
 欲張りなの? 高望み?
 何がダメなの?

 小さな家を建てて
 薔薇の花育てて
 安い車を買って
 そして金魚を飼いたい


ロビー「金魚?」

ヴェルクロ「そう!遊園地でゲットした事あるの!ピンポン玉をジャムの瓶に入れるゲームで!」

ロビー「なるほど…飼えると良いね」



ーーーーーー



サーシャ「ジェイムズの選挙事務所。ここを取り仕切るのは、狂った暴君のような選挙本部長、『ウィリアム・ジョージ』」



ウィリアム「悪くないねぇー、5ページの記事。見出しは“王子と乞食”。この記者、先週は玉をちょん切るぞって脅してやったけど、今週は一緒に新居のカーテンを選んでる気分だ」

ジェイムズ「この記事、ちょっと傲慢に見えないか?…あれ?君は!Big Issueの売り子!!」

ウィリアム「新しいスタッフの『スクラップ』だ」

ジェイムズ「スクラップ?」

サーシャ「サーシャです!彼はスクラップと呼んでますが…」

ウィリアム「フルネームなら、『スクラップ・ポンコツマン』!つまり役立たず」

サーシャ「いてっ!!」

マリリン「笑えない」

ジェイムズ「ウィリアム、こういうのは…」

ウィリアム「見ろよ。ホームレスに手を差し伸べてる姿。大事なのはこっちだろ?」

ジェイムズ「5ポンド返せ」

ウィリアム「スクラップ返してやれ」

(5ポンド返そうとするサーシャに、遠慮するジェイムズ)

ウィリアム「俺にも仕事をさせてくれよ。これからはどんどん仕事を提供しないとな。スクラップ、スケジュールを!」

サーシャ「ウィリアム、どうかやめて下さい。僕はサーシャです!…えー、午前9時、モーニングショー出演。12時、ロンドン消防署を訪問…」

ウィリアム「良いねぇーー!!ヒーローと一緒ならジェイムズもタフガイに見えるだろ?」

ジェイムズ「(腕をトントン)」

ウィリアム「おぉっと、消防署にはポールがあるな。マリリン、君はポールダンスの練習でもしとくと良い」

マリリン「…女嫌いの差別主義者、おまけに独裁者。あなた少し休んだ方が良いわよ!」

ウィリアム「スクラップはどうする?いっそ永遠に休むかぁ?焼却炉で!」

サーシャ「アハハハッ!!」

マリリン「私は弁護士よ?法廷に持ち込んでも良いのよ」

サーシャ「僕なら大丈夫です…」

マリリン「裁判所に行かなくちゃ、また後でね」

ウィリアム「ポールダンスの事考えといてくれよ。君の写真は大幅な修正が必要だろうけど!」

ジェイムズ「ウィリアム、5ページの記事は素晴らしいよ。でも一緒に写ってるホームレスが、同じ事務所のスタッフだと知れたら…僕はインチキはしたくない」

ウィリアム「やっているのは君じゃない、俺だ。俺の仕事は君をロンドン市長にする事だ。分かるだろ?」

ジェイムズ「僕がどう選挙をしたいかは、選挙ポスターのスローガンが語っている。“誠実に”と」



M3『Spin』


ウィリアム「ジェイムズ」

ジェイムズ「一日話そう」


♪常に誠実に 真実を語りたい
 真っ直ぐな態度で
 政治家の語る言葉が
 地に落ちた今こそ
 信頼を勝ち取り 勝利を掴む
 僕は自分のやり方で


ウィリアム「誰だって自分のやり方でやりたいさ」


♪嘘やいかさまで何を得られるのか
 誠実になりたい 市民の代表が
 もしも汚い詐欺師なら
 この街は終わりだ 約束しよう
 民衆の為の政治を


ウィリアム「ジェイムズ!」


♪勝つか負けか つまりそれが全て


ジェイムズ「ウィリアム」


♪お前の船 お前が漕げよ
 でも忘れるな 舵取りは俺だ
 勝利こそがゴールだ

 Spin 目が回りそう 我を忘れて動け
 Spin 回り続けろ 勝利の日まで


サーシャ「ジェイムズは、仕事をこなす為に回る回る~!」


♪常に誠実に 見て見ぬフリはしない
 善心あるのみだ 政治は
 腐敗まみれだと諦めているなら
 それを変えてみせる まずは勝たせて
 決して裏切らないから

 勝つか負けかつまりそれが全て
 クリーンなイメージで メディアに出ろ
  ? の中で舌を出しながら
 票を稼げ ひたすら

 Spin 回れ回れ 正しい姿見せろ
 Spin 上手く回せば その手に勝利を



サーシャ「ウィリアムに電話が入る。経済界の重鎮、『ベリンガム卿』だ」



ベリンガム卿「ウィリアム、今度の資金集めのパーティーだが。その場で金を搾り取るんじゃなく、この先搾り取れそうな連中を集めるんだ」

ウィリアム「つまり…」

ベリンガム卿「つまり、君と私とでは意見が違うと言う事だ。私の金だ、私の招待客リストでいく。分かったな?」

ウィリアム「分かりました」

ベリンガム卿「立候補締め切り間近の大事な時だ。今回の招待客が、結果を大きく左右するんだからな」


♪Spin Spin Spin Spin Spin

 Spin 目が回りそう 我を忘れて動け
 Spin 回り続けろ 勝利の日まで
 正しい私 ?
 選挙を捉えろ


ウィリアム「ジェイムズ!」

ジェイムズ「お疲れ様です」

♪勝利の日まぁ~ぁ~ぁ~ぁ~~

ウィリアム「♪ぁぁ……(かすっかす)」

ジェイムズ「♪ぁあーー」

ウィリアム「さすがジェイムズ!」

♪でぇ~~、ぇえ~~~~!!

 Spin Spin Spin!


ジェイムズ「お疲れ様でしたー」

ウィリアム「ジェイムズ!選挙は9時17時の仕事じゃないんだぞ。これから撮影をしなければならない」

ジェイムズ「マジで!?…分かったよ、少し時間をくれ……一人にしてくれないか!?」

ウィリアム「分かったよ」



ウィリアム「もしもし、僕だ。申し訳ない、遅くなりそうだ。OKのメールだけちょうだい、OK?…OKばっか言わせてるな。とにかく、連絡待ってる!」



ーーーーーー



サーシャ「夜の21時。人がまばらなトラファルガー広場では、ネルソン提督と4頭のライオンが誇らしげに散歩道を守っている。そしてロビーは、“ライオンの前足の横”で、一人…」



M4『Gypsies Of The Ether』


♪おかしいよね こんな会話
 空間に想い 投げ合って
 秘密のメール キーボードをスワイプ
 ディスプレイの中で彷徨うジプシー
 心の内側の 本当の想い
 目と目で語る事は 夢より遠い夢

 二人はまるでストレンジャー
 見知らぬ恋人だ
 遠く愛は空で 抱き合っている

 誰の目も気にしないで
 空間で愛を 語り合う
 誰の事も傷付けずに
 ありのままの自分でいられる
 表の顔の裏の 本当の姿
 束の間見せられる
 自由になれるけど

 二人はまるでストレンジャー
 見知らぬ恋人だ
 遠く愛は空で
 抱き合っている

 二人はまるでストレンジャー
 見知らぬ恋人だ
 遠く愛は空で
 抱き合って
 抱き合って
 抱き合っている

 おかしいよね 二人愛を
 彷徨うジプシー



ジェイムズ「ロビーに会えない一週間は、まるで永遠のようだよ」

ロビー「政治家の一週間は長いからね。それで、どれぐらいいられるの?」

ジェイムズ「今?」

ロビー「いや。君の・人生・で!♡」

ジェイムズ「人生?僕の…?」

ロビー「アハハッ!なんてね、もちろん今だよ」

ジェイムズ「ごめんね、ちょっとでも会いたくて」

ロビー「そりゃそうだよね、あんたは市長選とベッドインしなきゃならない。俺はただ、ハグしたかっただけだよ!」

ジェイムズ「ハグ!」

(ジェイムズへ飛び込むロビー)

ロビー「ピーターパンにウェンディがやるやつ!」

ジェイムズ「あれはさ、“ゲイ”!術的に可愛いよね!」

ロビー「アハハッ!その言葉嫌いなのかと思ってた!」

ジェイムズ「僕が嫌いなのは人にレッテルを張る事だ」


♪~(ロビーの携帯が鳴る)


ジェイムズ「誰?」

ロビー「友達だよ」

ジェイムズ「出なくて良い!やだやだ!」

ロビー「待て!待てよ?(電話に出る) もしもし?クロか、今手が離せないんだ……またかぁ…」

(ジェイムズ、ロビーに♡乱舞の画面を見せ付ける)

ロビー「分かった、後で何とかするよ…(電話を切る) ごめんね、仕事の事だよ」

ジェイムズ「上手くいってないの?」

ロビー「うん、あんまり。また洗濯機が故障したって。出費がかさむよ…」

ジェイムズ「いつでも力になるから!」

ロビー「ジェイムズから金は貰いたくない!」

ジェイムズ「あ、僕はただ…」

ロビー「(ジェイムズの手を取り)もうよそう?」

ジェイムズ「うん」


♪~(ジェイムズの携帯が鳴る)


ロビー「…誰?」

ジェイムズ「…仕事だよ」

ロビー「出なくて良い。やだやだ!出ないで!無理!」

ジェイムズ「待てよー?待て!(電話に出る) もしもし?あぁ君か」

(ロビー、手でハートを作ってジェイムズにアピール)

ジェイムズ「あ、あぁ考え事をしていて。…え、中華?分かった、僕が買って帰るよ。30分後ぐらいに(電話を切る) …ロビー、…」

(ジェイムズの胸に寄り添うロビー)

ロビー「行かなくちゃ行けないんだろ?」

ジェイムズ「また」

ロビー「また。行けよ…」

(去るジェイムズの裾を握るロビー)


♪二人はまるでストレンジャー
 見知らぬ恋人だ
 遠く愛は空で
 抱き合って
 抱き合って
 抱き合っている



ーーーーーー



サーシャ「ダナとクローダが“グラムアムール”の店内にいる。ここは二人が経営するストリップクラブで、ロビーのコインランドリーの隣にある。二人は夜通し楽しんで帰ってきて、その…僕に言わせれば、迷惑をはき散らして、この店の下品な照明の下で、その…僕に言わせれば、はた迷惑な醜さを見せ付けている!」



クローダ「何か聞こえたー?」

ダナ「何かって?」

クローダ「声っ」

ダナ「声ー?」

クローダ「気取ってるけど貧乏くさい声。多分変態だねぇー」

サーシャ「悪いけど大金持ちであっちも強いよー」

ダナ「どうでも良いし!それより昨日どうだった?彼の喉ちんこに食らい付いてるの見たけどっ」

クローダ「あぁ…彼は既婚者だった」

ダナ「くーーそーーがーーっ」

クローダ「同情を誘ってきたんだよぅ!奥さんが車椅子生活で、ずっとヤってないって!で、今日は女房が留守だからとか言って家に行った訳。ところが行って5分もしないうちに車が止まる音がして、『女房だー!!』とかあいつが叫んで!そしたら玄関から聞こえたんだよ…車椅子の音じゃなくて、足音が!」

ダナ「信じらんなーーい」

クローダ「で、次の瞬間あたしは勝手口から追い出されたって訳…」

ダナ「…あんたボーリングの玉みたいね」

クローダ「ボーリングの玉?」

ダナ「つまみ上げられて指を突っ込まれて、レーンの奥に投げ出されたんでしょ…?」

クローダ「……はぁっっ!!!」



M5『I'm So Over Men』


クローダ「私はこの手のゲームには年を取りすぎた…失望しすぎた……」


♪ニコチンパッチ みたいなやつが
 あれば良いのに
 男への欲望を消してくれるパッチが
 運命を感じた人 全てが勘違い
 皆ヤりたいだけ ただの獣
 行きずりの男よ、さらば

 もういらないわ 男なんか
 ヤりたい時は セルフサービスで
 イかした男たちも パンツ脱いだら幻滅
 演技力で乗り切って 言ってあげた
 『あんた最高ーー!!』
 この世から消えてしまえ 男なんか

 これからは男なしで生きるグループで
 お互いに恋愛の傷を嘗め合うの
 生まれ変わるのさ 二度と嘆かない
 あの獣たちに餌はやらない
 一人でも生きていけるさ

 もういらないわ 男なんか
 女とみれば 抱く事ばかり
 ベッドの中でガス噴射
 便座は上げたまんま
 もう我慢はしたくない
 愛なんか ハッ!『幻』
 この世から消えてしまえ 男なんか


(携帯を見てスキップしながらロビー登場)

ダナクロ「あぁぁぁーーーーー!!!!!!!」

ロビー「(ビクッ!)」

クローダ「あぁーら染みったれたオカマのロビーじゃないのぉ!ちょうど良かった、これサービスで洗っときなさい!」

ダナ「高級品だから縮まないようにねー(下着が入った袋を投げる)」

ロビー「(中身見て)もう縮んでるだろ。コインランドリーが欲しいなら自分たちでやれよ!(クローダに袋を投げ返す)」

クローダ「…なーんでパパはあのババアが死んだ時にあんたを追い出さなかったんだろう!こんな息子、パパにとってはアシカだよぅ!(袋を投げ返す)」

ロビー「足枷だろ!あいつは俺の親父じゃない!」

クローダ「どうでも良いわ!大事なのはあんたとあの洗濯女はもう長くないって事!」

ダナ「ようするに」

クローダ「おしまい」

ダナクロ「消えな!!」

(すごすご去っていくロビー)


♪ワクチンがあるのなら注射を射ちたい
 男はウイルスさ 撃退してやる

 もういらないわ 男なんか
 跪いて頼まれようと
 もう二度と  ?
 男をはね除ける

 食べかすも片付け
 パンツの洗濯も
 タバコの吸い殻も
 何もかも ハッ!『くそ食らえ!!』
 この世から消えてしまえ 男なんか

 排卵日チェックも 妊娠検査薬も
 最低な会話も 全部おさらばさ
 『女房にバレた 俺さ、禿げるかも…』
 『ママに会ってくれ じゃなきゃ別れるよ』
 『友達でいよう 結婚はできない』
 散々な感じで 涙もさよなら

 この世から消えてしまえ
 男はもういら…

ダナクロ「ヘヘッ!」

♪な~~~~いっ!



サーシャ「そこへ、ウィリアムとサーシャが選挙の活動にやって来た」



ウィリアム「緊張するな、ただの売り込みだ。さぁ、売り込んで来い」

ダナクロ&サーシャ「………」

サーシャ「……僕には無理です」

ウィリアム「…仕事なんだぞ、このスクラップ野郎!!いいか、よく見とけ…。こんばんは、お嬢さん方」

クローダ「お嬢さん!?あたしらの事!?」

ダナ「ふぅぅ~~~~!!!」

サーシャ「…どなたに投票されるかもうお決まりでしょうか!」

クローダ「投票って?」

ウィリアム「ロンドン市長選ですよ、我々はジェイムズ・プリンスを応援しています」

ダナ「あらやだ、可愛いっ!」

クローダ「あたしはもうちょいゴツいのが好き」


♪~(ウィリアムの携帯が鳴る)


ウィリアム「ちょっと失礼。スクラップ一人でやれ!」

サーシャ「えっ!?」

ダナ「あんた、ストリップクラブって行った事ある?」

サーシャ「いいえ」

クローダ「なら来なよ!良い機会だし!あ、でも椅子に座っちゃダメだよ?まだ濡れてる・か・ら♡」

(サーシャ、ダナクロに引き連れられ下着で遊ばれる)


ウィリアム「(携帯に出る)これはベリンガム卿、ご機嫌如何ですか?」

ベリンガム卿「さっきまでは良かったんだがね…君のお陰でめちゃくちゃだ!!」

ウィリアム「…何か問題でも?」

ベリンガム卿「君のそのテカテカ光ったスーツから招待状を出しなさい」

ウィリアム「招待状ですか?」

ベリンガム卿「何か見えてこないか?何か忘れてないかね?」

ウィリアム「日付・時間・会場…」

ベリンガム卿「発起人は?」

ウィリアム「…はっ!しまった!!」

ベリンガム卿「やってくれたねー。発起人がいないんじゃどこから金を出すんだ。え?作り直しなさい」

ウィリアム「ですが、新たに送るとなると、かえって目立ちますよ。我々のミスが」

ベリンガム卿「君のミスだろまったく!!君は、発起人は書いていないが会場は書いてあるから大丈夫だと踏んでいるんだね?」

ウィリアム「はい。…あ、いや!!その、…えー、だからその…あの……」

ベリンガム卿「君の推す候補者が、君よりも上手く選挙を切り盛りしてくれる事を祈ってるよ」

ウィリアム「申し訳ありません…」

ベリンガム卿「以上だ!」


ウィリアム「(電話を切る) …くそっ、くそくそくそーー!!スクラーーーップ!!!」

(サーシャ、体中に下着を身に付けている)

ウィリアム「よくもやってくれたな。招待状に玉金卿の名前が無いじゃないか!!」

クローダ「玉金!?パーティー!?」

ダナ「玉金!?玉金!?」

ウィリアム「行くぞ!!」

ダナ「ちょっと、私たちを誘わなくて良いの!?その玉金祭りにぃーーー!!!」


ダナクロ「……」


クローダ「…『ジェイムズ・プリンスがあなたのご出席をお待ちしてます』だって。…だったらこの人のお誘いお受けしようじゃないの!」

ダナ「でもフィアンセがいるんでしょ…?」

クローダ「だから?まだ結婚してないよ?」

ダナ「…!!確かに…チャンスはある!!」



M5a『I'm So Over Men - Reprise』


♪もういらないわ 男なんか
 でも市長なら 話は別だ
 最後のチャンスに賭けよう
 新しいドレスで 出掛けよう
 パーティーで踊るのさ ダンスを

 今度こそ愛を掴もう
 二度と男は…

 いらない いらない いらないけれど
 いらない いらない いらないけれど
 これは? これは? これは?
 人生最後の チャンス!



ーーーーーー



サーシャ「夜の23時。ジェイムズはまだ、自宅の書斎で仕事をしている」



マリリン「貴方を選べば幸せになれるわね」

ジェイムズ「…誰が?」

マリリン「もちろんロンドン市民よ。誰の事だと思ったのぉ??」

ジェイムズ「あ、いや、僕は没頭していて…」

マリリン「働きすぎよ。もう上に行きましょ」

ジェイムズ「マリリン!…君がいなければ、ここまで来れなかった」

マリリン「そうね?」

ジェイムズ「僕には、君が必要だ」

マリリン「分かってる!」

ジェイムズ「でも、ごめん」

マリリン「…何が?」

ジェイムズ「つまり、……今までと同じという訳にはいかない」

マリリン「いいえ同じよ。もっと大変になるでしょうけど!貴方が勝てば」

ジェイムズ「勝たなかったら?」

マリリン「別のかたちになるでしょうね。貴方は変わらないし、私は貴方を変えられない」

ジェイムズ「あぁ…」

マリリン「ふふっ、大学の頃みたいね!覚えてる?アムネスティー・インターナショナルの、関節炎のお年寄りにニットを配る運動について!」

ジェイムズ「あれは酷かったなー!」

マリリン「酷かったわー!」



M6『Remember Us』


マリリン「それでも私たちは上手くやった」

ジェイムズ「本当だな。遠い昔のようだけど」


♪いつでも信じて前を向いていた
 そうでしょ?

 よく覚えていない
 でも君は 若くて前向きで
 いつでも

 いつでも二人で


 貴方は目指してた ロビンフット
 正義を

 貫くのが夢

 世界の未来を語り明かし
 いつでも

 いつでも二人で


 不思議だけどいつも二人
 上手くやった

 まるで足に馴染んでいる
 靴のように

 まさにその感じ

 そろそろしわくちゃな感じ


マリリン「ちょっとー!」


♪貴方伸ばしてたね髪を

 後ろだけ

 メールはスーツタレント 言ってた

 間違ってた 君は携帯

 携帯電話

 馬鹿でかいやつを

 得意気に持って

 いつでも いつでも二人で


 言われたよね あの二人は続かないと

 だけど今も

 二人いつも

 支え合って
 二人で一つ 今でも理想の二人


 あれから


 笑顔も

 涙も

 二人で

 共に分かち合い

 いつでも


マリリン「さぁベッドへ」


♪いつでも


マリリン「久しぶりに」


♪二人で


ジェイムズ「メールをあと一通だけ!そしたら行くから!」

(ジェイムズの元へ行き、PCを閉じるマリリン)



ーーーーーー



サーシャ「二日後のコインランドリー。ロビーとヴェルクロがお喋りをしている。皆様には少々、お下劣に聞こえるかもしれないけど…」



(ロビクロがジェイムズの選挙のビラを見ている)

ヴェルクロ「うわー、残念!スーツ着てんじゃん。競泳用水着の方が票が集まるかと思ったのに」

ロビー「水着じゃ当選の薔薇の花はどこに付けるんだよ!」

ヴェルクロ「もちろん、あ・そ・こ♡」

ダナクロ「ふぅ~~~~!!!」

ロビクロ「……」

ロビー「…何の用だ」

クローダ「これから金を使いまくるの!」

ダナ「だから金出しな」

ロビー「…ほらよ」

(ダナクロ、金を奪い取る)

ダナ「いくらある?」

ロビー「500。いつも通りだ」

ダナ「完っ全に足りない!」

ロビー「それはお前らの頭だろ?」

ダナ「はぁ!?値上げするって言ったでしょ!?」

ロビー「…値上げ分は少し待ってくれ」

クローダ「じゃあ24時間以内ね」

ダナ「いいや12時間だ。さもないと、部屋の、鍵も、付け、替えるからぁ」

ダナクロ「キャハハハハ!!」


ロビー「…やったね、すっからかんだ!」

ヴェルクロ「どうするつもり?」

ロビー「あぁー、どうするかなぁーー……俺に何が出来る…?」

ヴェルクロ「体売れば!(笑)」

ロビー「笑えないよ」


♪~(ロビーの携帯の着信音)


ロビー「もしもしー?」

ジェイムズ「もしもし僕ー!どうしても声が聞きたくて、あんまり時間ないんだけどごめんね」

ロビー「謝らないで!次はいつ会える?俺は今夜、空いてるけど…」

(茶々入れるヴェルクロを追い払うロビー)

ロビー「明日の夜の方が良い?」

ジェイムズ「会いたいー!会いたいー、けど…今日はやらなきゃいけない仕事があるし、明日は資金集めのパーティーがあるんだ。でも時間を見つけて必ず!」

ロビー「無理しないで!でも出来るだけ早く♡」

ジェイムズ「うん!♡ あ、行かないと。じゃあ!ばいばーい」

ロビー「ばいばーい!」


ヴェルクロ「…甘ったるーーーい!!!!」

(ロビーに飛び付くヴェルクロ)

ヴェルクロ「こんなあんた見た事無いよ!エイリアンに拉致されて、ぬいぐるみのワンちゃんに変えられたみたい!彼の名前教えなさいよぉ!」

ロビー「言えない!厄介な相手なんだ!ただ俺が言えるのは…彼は俺を笑顔にしてくれる。心の底から!」


サイドサドル「じゃん!!」

(サイドサドルが現れ、ロビクロの間から花束を差し出す)

ロビー「サイドサドル!こんな事しなくて良いのに!半額で良いって言ったのは、君がもっと楽になるまでの事で…」

サイドサドル「これは私からじゃないんだ。そこで配達の人から受け取っただけ。あ、洗濯物出来てる?」

ロビー「出来てるよ」

サイドサドル「ロビー!それは誰から?」

ヴェルクロ「ロビーの新しいボーイフレンド!でも名前は聞いちゃダメ、厄介な相手なんだって!」

ロビー「誰だろ?誰がこんな…」

(花束の中にある封筒から札束を取り出す)

ヴェルクロ「ロビー!どうしてお金なんか入ってるの!?本当に体売ってるんじゃないよね…?」

ロビー「そんな訳ないだろ!」

ヴェルクロ「いくら入ってる?」

ロビー「(封筒の中身を確認)……!クロが数えてくれ!」



M6a『Old Compton Street - Reprise』


♪君との出逢いは まるで奇跡だ
 もっと深い仲になる時がきた
 出逢いの経緯は 誰にも言うな
 つまらない事だ 忘れてしまおう


ベリンガム卿「ロビー、君の気持ちを誤解していないと良いんだが。君と新しい扉を開けたいんだ。明日、私の家でパーティーを開くから、君も来て欲しい。遅くなるから一晩泊まっていくと良い。スローン・ストリートのプラダに君が行く事を伝えてある、似合う服を選びなさい。私の気持ちも同封しておくよ」


♪君にはそんな場所 似合わない
 出ておいで早く 私のお金で
 抜け出してこい Old Compton Street



ヴェルクロ「1000ポンドあるよ!本当にロビーの事が好きなんだね!」

ロビー「それが困るんだよ!…こっちにくれよ」

(ヴェルクロから札束を受け取り、ロビーに渡すサイドサドル)

ヴェルクロ「…何してんの?」

ロビー「贈り返す。花束も一緒に」

ヴェルクロ「ロビーどういう事!?さっきまで彼と電話で、リゾート地の太陽のように顔輝かせてたのに!もう気のないフリ?」

ロビー「これは彼からじゃないんだ!…サイドサドル、クロと二人っきりにして貰えないかな?ちょっとだけで良いから…」

サイドサドル「…一晩でも良いよ!もう帰るから。じゃあね」


ヴェルクロ「…で?」

ロビー「(花束を持って)…俺は、この人と付き合っている」

ヴェルクロ「うん、それは知ってるよ」

ロビー「うん、そうじゃなくて!(携帯を取り出し)…二人と付き合ってると言うか」

ヴェルクロ「え!?」

ロビー「…俺はこの人(花束)と3ヶ月間付き合った。そして、彼(携帯)と恋に落ちた。と、思う。…つまり複雑で!」

ヴェルクロ「複雑じゃないじゃん!たった今彼は1000ポンドと花束を贈ってきたでしょ?」

ロビー「だからそれは彼からじゃなくて別の人なんだ!」

ヴェルクロ「じゃあ誰?」

ロビー「金持ちの人で、実業家で、貴族の称号を持っている…」

ヴェルクロ「貴族…!!!」

ロビー「ウェブサイトで知り合ったんだ。金持ちのおじさんが、その…金のない若者と出会うサイト…」

ヴェルクロ「ロビー……」

ロビー「分かってるよ!?でも金が必要だっただろ!?この人は俺を気に入って、酒・ディナー・映画、一緒に行ったよ!でも今回は現金と花束だ。おまけに一晩一緒にいたいと言っている。これじゃ売春だよ…!」

ヴェルクロ「今更何言ってんの。で、それが彼氏にバレた訳?」

ロビー「そうじゃないけど…」

ヴェルクロ「だったら何が問題なの!?シュガーダディ様は捨てて、プリンス・チャーミングとくっつけば良いじゃん!」

ロビー「そんな簡単じゃないんだよ!…つまり、プリンセス・チャーミングがいるんだ」

ヴェルクロ「奥さん!?」

ロビー「フィアンセだよ」

ヴェルクロ「はぁぁ!!!何て事!!!」

ロビー「君も知ってる人だよ?つまり、彼の事だけど…」

ヴェルクロ「あたしの知ってる人?その彼を?」

ロビー「ちょっとした有名人だから」

ヴェルクロ「待って!秘密がありそうな有名人、秘密がありそうな有名人、秘密がありそうな有名人、秘密がありそうな有名…あぁーーいっぱいいすぎて分かんない!!ロビー、名前教えて……?」

ロビー「ハァー……(椅子に置いてあるジェイムズのビラを手に取り見せる)」

ヴェルクロ「…ちょっと。真面目に」

ロビー「真面目だよ」

ヴェルクロ「…ジェイムズ・プリンス?市長選の?ゲイなの!!?見えない!!!」

ロビー「でもゲイなんだ。公にしていないけど」

ヴェルクロ「ロビー、ダメ。この恋は危ない。危険がいっぱい!」

ロビー「分かってるよ!」

(男性客が来店)

ヴェルクロ「あ、5番が空いてます。右側」

男性「…(ペコッ) ……(ロビーをじっと見る)」

ロビー「…?」

男性「(ニヤッ)」

ロビー「…つ!?(ゾッ)」

ヴェルクロ「ヤバいよ!スキャンダルになるよ!政治家・不倫・怒り狂ったフィアンセ、おまけにあんたは貴族のジジイと付き合ってる。ロビー、悪い事は言わないから…」

ロビー「分かってるんだよ!でも…!!」

ヴェルクロ「シーッ!!」

(男性が“LOVE”と書かれたピンク色のTシャツを見せつけてくる)

ロビー「明日何が起きるか分からないからって、人生最高の出逢いを捨てたりなんか出来ないよ。分かるだろ?」

ヴェルクロ「分かるけど…」

(男性がマッスルポーズ柄の青いTシャツをアピール)

ヴェルクロ「でも何で彼はカミングアウトしないの?だーーれも気にしないのに!」

ロビー「するよ、フィアンセが」

ヴェルクロ「あぁ…。…信じられない、私のゲイを見分ける能力も鈍ってきたなー。ゲイ・ストレート・バイ・トランスジェンダー・フィア・アセクシャルパンセクシャル!頭が変になる!!!」



M7『It's Hard To Tell』


ヴェルクロ「例えば、彼(男性)」

ロビー「…この人?」

ヴェルクロ「そう、この人」


♪どう見ても この彼はオカマ
 でも確信は持てない

(ズボンを脱いでTバッグ(尻)を見せつける男性。そしてロビーに触らせるよう引っ張る。嫌がるロビー)

♪彼がカミングアウトして
 シャウトしてまわらなきゃ
 本当の顔は分かりゃしない

 分からない 誰がゲイなのか
 それともストレートなのか
 ここいらの場は昔はゲイばかり
 今じゃいるのさ あらゆる変態が

 分からない ホモかバイかヘテロ
 男に見えて女かも
  ? のように美しくてもまだ
 息子が付いてるかも

 GUCCIの服で全身決めて
 ナンパに見えても
 本当は自分が男たちに
 ナンパされたがってるかも

 分からない 見た目じゃダイヤモンドか
 それとも石ころなのか
 活かすカサノヴァ それは付け焼刃
 実は男になる途中かも

 分からない 誰がゲイなのか
 それともストレートなのか
 男だけど女装が好きとか
 深すぎる世界

 コスプレ好き マッチョが大好き
 趣味はいろいろ
 ムチに打たれ喜ぶ人
 昼間はマフィアのボス
 きりがない

 分からない 分からない
 秘密抱いて誰もが生きて
 愛を隠して シワを伸ばしてた

 分からない 誰がゲイなのか
 それともストレートなのか
 確かめよう 街に繰り出して
 その日のその心
 その日のその心


ジェイムズ「どんだけ~~~!!!そろりそろり…」



ーーーーーー



サーシャ「ロビーとヴェルクロは、疲れ果ててベンチでぐったり。二人は夜通し、ソーホーの人々の性的傾向について調べていたんだ」



ヴェルクロ「ねぇロビー、頭痛くない…?私バドワイザーのトラックに跳ねられたみたいな感じ。あぁー、ウォッカが余分だった…」

ロビー「俺は一睡も出来なかった…信じられない、俺がこんな失態をするなんて…」


♪~(ロビーの携帯のメール受信音)


ヴェルクロ「どっち!?ゲイの貴族?どっち付かずの市長?」

(ジェイムズ、下手袖より登場し挙手)

ヴェルクロ「あー、市長さんかぁ。ねぇ、ちょっと見せてよー」

ロビー「ダーメっ!」

ヴェルクロ「見せてよ!!!あたしも知ってる人なんだから!!」

ロビー「あ、ちょっ……」

(携帯をヴェルクロに取られ、寄り掛かられるロビー)

ヴェルクロ「どれ?『君の事を想ってる。会いたい、待ちきれないよ!“パクッ”』」

ジェイムズ「(バナナを口で剥き“パクッ”で食べる)」

ロビー「“パクッ”じゃなくて“ハグ”!!」

ジェイムズ「!!?(口の中バナナでいっぱい)」


ロビー「あぁー!!クロ、彼を思うと胃が痛い…もうベリンガム卿とは続けられないし、金返さなきゃな…」

ヴェルクロ「待ってロビー!1000ポンドは役に立つよ!?でしょ?こうするの。あのあばずれ姉妹のところに行って家賃を払って、つべこべ言わせないようにする。そしたらあたしたちはスローン・ストリートのプラダに行って、あんたに最高級のタキシードを買って、あたしにもちょっとしたものを買う!」

ロビー「クロにも!?」

ヴェルクロ「何か?頷いて?」

ロビー「(コクン)」

ヴェルクロ「よし!そしたらあんたはその気取ったパーティーに行って、何とか卿に優しく、けれど節度を持って接する。それが済んだら二度と彼には会わない」

ロビー「でも彼は泊まっていけと言っている」

ヴェルクロ「あんたはそのつもりで振る舞ってれば良いの!あたしが12時に電話するから!」

ロビー「え?」

ヴェルクロ「12時に電話して、『緊急事態が起きたー!』とか何とか言うから。『地球が爆発したー!』とか何とか」

ロビー「いや地球は…」

ヴェルクロ「とにかく!あんたは途中で逃げてくれば良いの!そうすればゲイの貴族の約束は破らないし、バイのプリンスにも忠実なままでいられるでしょ?」

ロビー「んーーそんなに上手くいくかな…」

サイドサドル「はーーーい元気ーーー!!!力車に御用はーーー!!!」

(サイドサドル、自転車に乗って登場)

ヴェルクロ「あるー!スローン・ストリートのプラダまで!」

ロビー「あ、クロ!」

サイドサドル「結構遠いから、値が張るよ?」

ヴェルクロ「プラダの後は、彼をヘアカットまで連れてって、そのまま夜中まで貸し切ったらいくら?」

サイドサドル「100ポンド!」

ヴェルクロ「よし!ロビー、50払って!」

サイドサドル「50!?」

ヴェルクロ「料金は半額だよ、忘れた?」

ロビー「…俺に借りがあるだろ?」

サイドサドル「…50で良いよ。スローン・ストリートってセレブ向けだけど?」

ヴェルクロ「この人今夜着飾ってパーティーに行くの。そうよね、ロビー?」

ロビー「…いぇーい、ノリノリだぜー(棒読み)」

サイドサドル「全然ノッてなくない?ハハハ!」

ヴェルクロ「これからノリノリになるのよねー!」

ロビー「あーそうだねー!!」

ヴェルクロ「じゃあそういう顔しなさいよー!!(ロビーのほっぺをつねる)」



M8『You Shall Go To The Ball』


♪あんたは今夜シンデレラ
 舞踏会へ
 胸張っていくのシンデレラ
 送り届けるよ

 かぼちゃの馬車は出せないけれど
 料金半額じゃ まぁこんなとこさ


ロビー「クーロっ!」


♪連れていくよシンデレラ
 舞踏会へ
 楽しんできなよ 今夜は
 送り出すよ 優雅な夜へと


ロビー「あ、ちょっと!」


ダナ「どう!(ポーズを取る)」

クローダ「体に接着剤を塗って、アクセサリーの上を転げ回ったみたい」

ダナクロ「はーーーっ!!!」


シャンパン 樽ごと飲もう
 飲もう
 ワインとあとはビールも
 いいね
 捕まえるの王子様を 今夜はこの手で

 行こう我らシンデレラ
 魅惑の夜
 探しに行こう 輝く一番星を
 口紅は派手に マスカラはCHANEL
 つまんない女でも
 化けりゃ良いのさ 美女に

 年の差があろうとも
 奇妙に見えようと
 ゲイのジジイの
 狂い咲きで悪いか

 今夜はおいでシンデレラ
 舞踏会へ
 溢れる愛の炎で 抱いてあげるよ

 どうしてこんな事してる?
 吐き気がする
 お休みするベッドは一つにして
 ダメだ こんな事全然
 上手いやり方じゃないよ

 今夜の二人 ゴールデンカップ
 笑顔で
 勝負を分ける夜だ
 いかが? いかが…

サーシャ「ああぁーーー!!(ウィリアムに落とされる)」

♪愛想よく 全員と笑顔で話せ

 どうしてこんな事してる?
 震えてくる
 こんなチャンス滅多にないよ
 凄いパーティー
 躊躇ってないで行きな
 特製の馬車が待つ

 今夜は行こうシンデレラ
 舞踏会へ
 危ないヒロインはいつか
 輝く場所へ
 上流階級の人 まさに良い女だね
      ?  
 さぁ見せよう その姿

 今夜は行こうシンデレラ
 舞踏会へ
 注目浴びてシンデレラ
 確かめる時だ

ベリンガム卿「ロビー!」

♪そのガラスの靴

ジェイムズ「ロビー?」

♪君に合うのか……


ロビー「これ、ヤバくね…?」


♪をーーー!!